うつ病であっても正々堂々と行きたい。

うつ病であっても、社会の中で再び光り輝きたい。

うつ病のピアサポートグループ『ガレージとーく』の参加者の中には、うつ病が原因で失業し、 その後病状が安定し、就職活動を始めるけれどなかなかうまくいかないという方が何人かいらっしゃいます。就職活動で応募してもなかなか採用に結びつかず、そのことが焦りや不安になって、うつの症状を悪化させているような状況でした。中には、借金を抱えている方もいて、時に自殺を考えるほど、精神的に追い詰められている状況の方もいます。

また、うつ病が完全に治らない中での再就職は、再発の不安もあり、かといって、病気をオープンにして就職活動をしても、うつ病患者を受け入れてくれる会社はほとんどありません。クロー ズで求職活動をし、仮に採用になっても、いざ働き始めるとなると、再発への大きな不安を抱えてのスタートになります。

わたし自身も、うつ病が回復に向かい就職活動を始めたときがちょうどリーマンショックと重な り、応募したくても求人が無く、アルバイトでもパートでも、フリーペーパーで求人を見つけたら片っ端から応募しました。それでも、23 社連続不採用になり、24 社目にようやく採用になったのが、今契約社員で勤務している会社です。ですので、うつ病で仕事を失ってからの再就職の大変さは、十分分かっているつもりです。

うつ病から回復するまでも大変なんですが、回復してからも結構大変です。うつ病になって失った仕事、お金などは元のように取り戻せないのが現実です。自分にできる働き方を考えたり、低い収入でどう生活していくかを考えたり、そのために、うつ病になっても視野を広げて復帰する、 または別の生き方に気付き、自分らしい人生を実現する。今までの自分の生き方を見直し、これからの人生のストーリーの書きかえが必要になる場合もあると思います。

うつ病になって仕事復帰を考えるとき、自分が今までやってきた職種へのこだわりが捨てられなかったり、正社員のこだわりが捨てられなかったり、人によって考え方は様々ですが、一度仕事について見つめ直してみることも必要ではないかと思います。こだわりを捨てたとき、意外にも道が開けるかもしれません。自分がうつ病になった現実を見つめ、そこから自分の生き方を見直し、これからの人生のストーリーをどうするかを考える。「うつ病になってしまった前よりも素晴らしいと思える人生を生きる。」がわたしの願いです。

うつ病になることは決して悪いことではない。視点を変えれば、これまでの自分を今一度見つめなおす時間と機会ができたということはないでしょうか。自分と向き合うことで、『大切にしたい価値観』『強み』『ありたい方向性』を整理し、それらを土台にした自分らしい生き方を構築できれば、『これから』は『これまで』よりも充実した人生になるはず。

応募の際の履歴書や職務経歴書の書き方、面接のテクニックなども必要なことですが、それよりも、そんなキャリア=人生の見直しのお手伝いを何かのかたちで実現したいと考えています。世の中には「就労支援ワーカー」の方がいらっしゃいますが、就労支援というよりも、うつ病からの、“リワーク(Rework)” , “リカバリー(Recovery)” , “リ・クリエーション(Recreation)”の3 つの“R”を支援するような仕組みをつくりたいと感じています。

最後にわたし自身のうつ病からのリカバリーの話をします。わたしは転職も多い方ですが、プログラマーからSE、ネットワークエンジニアとIT エンジニアとして、スキルを積んできました。2004 年に仕事のストレスからうつ病を発病した後も、失業して療養し、少し回復の兆しが見えたら、 またIT エンジニアの仕事に就くも、うつ病を再燃するというのを何度も繰り返し、もうIT エンジニアとして働くことを諦めかけていたとき、病院の臨床心理士からアルバイトを勧められ、接客サービス業というそれまでと畑違いの職種の仕事に就きました。アルバイトという気楽さもあったかもしれませんが、思った以上に仕事が楽しく、ストレスもなく、うつ病が再燃することは ありませんでした。それがきっかけで、IT エンジニアという職種へのこだわりが消え、その後、 求人に応募する際の選択肢が広まりました。

また、あることがきっかけで、全身性エリテマトーデスという難病の方と知り合い、メールのやり取りを重ねる中で、その方から、『「7 年かけてうつ病を乗り越えたぜ!」というのは、長谷川さんにとっての最強の武器ですね。怖いものはない!うつ病の患者に対して「治りません」と言いきってしまう医者もいるそうです。そんな言葉に絶望している患者たちに、「治る!大丈夫!」 と言えるのは、長谷川さんのような方だけです。ぜひ、病気の経験を生かして何か活動されることをお勧めします!』と言われ、自分の『強み』『ありたい方向性』が見えてきてのです。

これから、わたしと同じようにうつ病で悩み、もがき、苦しんでいる方へ、少しでも役に立ちたいと思い、うつ病の方の症状改善・復職・社会復帰、リカバリーをサポートしていきたいと思っています。現在は、契約社員との二足の草鞋ですし、収入も発病前の半分になり、いろいろ大変ですが、今はとても充実しています。まさに、「うつ病になる前よりも回復後のほうが素晴らしいと思える人生を生きている。」と自信を持って言うことができます。

2014 年1 月26 日
任意団体うつリカバリーエンジン
代表 長谷川 洋

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