『メンタルヘルスリテラシー教育』とは?

学校の教育現場では、ひきこもりや不登校、摂食障害、虐待やいじめ、うつ病や自殺など学校メンタルヘルスに関する対策が喫緊の課題になっていますが、学校では、メンタルヘルスに関する基礎的な知識や対応方法(メンタルヘルス・リテラシー)に関する教育が十分に提供されていない厳しい現状があります。そのため、専門家に援助を求める行動が遅延し、必要な専門機関への受診が遅れ、深刻な事態を引き起こす大きな原因になっています。

2022年1月6日の朝5:20頃からNHKで放送された兵庫県立尼崎小田高等学校のこころの授業が、とても良かったと思いました。精神疾患のある方を学校に招いて、出前授業を受けるという内容でした。

うつ病などの精神疾患については「メンタルヘルスリテラシー教育」というのがあります。「メンタルヘルスリテラシー教育」とは、こころの不調や精神疾患についての知識を得ることで、病気を予防したり自分のこころの不調に気づいたり、まわりの大人や友達、専門相談機関などに相談できる力をつけていくことをめざす教育です。

子ども自身の病気だけでなく、家族、友人、仕事で出会う人と広げて考えると、精神疾患に出会うことのない人生を送る人はいないと思います。病気の基本的な知識や対処法は、生きるための欠かせない情報だと考えます。

海外では「学校メンタルヘルスリテラシー教育」に取り組んでいる国が多くありますが、日本では長い間学校のカリキュラムに位置づけられておらず、取り組みが進まない状況が続いていました。ようやく2022年度から高校の保健体育に「精神疾患の予防と回復」が追加され、約40年ぶりに精神疾患の具体的な記述が復活し、子どもたちが精神疾患について学ぶ機会となるようです。

『メンタルヘルスリテラシー』教育を実施することで、何が身につくのかを考えてみました。

こころの健康を『理解する力

第1に、こころの健康を『理解する力』です。

自分のこころが元気であるってどんな状態なのか、逆に、ストレスがかかっていてつらい時ってどんな具合なのか、さらには精神疾患ってなんなのか。そんな「こころの健康」について正しい知識や情報を理解することです。

こころの健康を『生みだす力』

第2に、こころの健康を『生みだす力』です。

実際に、ストレスがかかってこころが苦しくなってしまった時に、自分の力でストレス解消をして元気を取り戻したり、自分だけでは苦しさから抜け出せない困った時に、まわりの人たちにサポートを求めることができるようになることです。

こころの健康を『高めていく力』

第3に、お互いのこころの健康を『高めていく力』です。

他人のこころの健康についても力になることができたり、地域全体でみんなの元気をサポートしていかれるように取り組んだり、こころの健康を高めていくこともメンタルヘルス・リテラシーです。

中学生くらいの10代初めから『メンタルヘルスリテラシー教育プログラム』受けることができ、上記の3つが身につくことができれば、うつ病など精神疾患の予防には非常に有効ではないかと感じています。

弊団体では、学校への出前授業など「学校メンタルヘルスリテラシー教育」にも力を入れています。

大修館書店 令和4年度高等学校保健体育 教科書