『もしすべてのことに意味があるなら』(著:鈴木美穂)を読んで

2019年2月28日に発刊された、鈴木美穂さんの著書、『もしすべてのことに意味があるなら がんがわたしに教えてくれたこと を読みました。

「あの日、ただ泣くことしかできなかった」

24歳で乳がん発覚。日本テレビで報道記者・キャスターを続けながら、がん患者と支える人たちのための施設「マギーズ東京」を設立。がんになって10年の時を経て考える、生き方、社会、仕事、恋愛、結婚、夢について。

「マギーズ東京」は、がんになった人やその家族・友人など、がんに影響を受けたすべてのひとがいつでも気軽に訪れ、ゆっくりお茶を飲んだり、治療や日々の生活などについて相談したりすることができる場所。1996年に英国で生まれた無料相談支援施設「マギーズキャンサーケアリングセンター(マギーズセンター)」の初めての日本版で、2016年に東京・豊洲にオープンしました。

24歳の時に進行した乳がんが見つかり、闘病生活では何度も心が折れそうになり、「なんで自分だけが」と泣いてばかりいた著者。でも、がんにならなければ、その存在を知ることも、携わることもなかっただろう「マギーズセンター」。そして、がんになったからこその出会いや学びが、たくさんありました。それをまとめたものが本書です。

 

著者の鈴木美穂さんは、認定NPO法人マギーズ東京 共同代表理事をされています。マギーズ東京のことは、『ソトコト』という雑誌の2017年4月No.214号を読んで知りました。マギーズ東京は、東京豊洲にあり、2016年10月にオープンしたがん患者や家族のための無料相談支援施設です。がん患者やその家族・パートナー・友人など、がんに影響を受けたすべての人が、とまどい孤独なとき、気軽に訪れて、安心して話したり、また自分の力をとりもどせるサポートもある。自然を感じられる小さな庭やキッチンがあり、病院でも自宅でもない、第二の我が家のような居場所です。

がんになると、治療のこと、日々のくらしのこと、医療者との付き合い、家族のこと、学校や仕事のこと、お金のこと、身近ながんの人にどう接したらいいか、いろいろなことが思い浮かぶのではないでしょうか。たくさんの医療情報の中から自分に合うものをどう見つけるか…そんな時、気軽に立ち寄れる場所だそうです。

マギーズ東京を知り、がんに限らず、うつ病患者やその家族・パートナー・友人などにも、同じ居場所があったらいいな…と思っていたのですが、そのマギーズ東京を立ち上げた鈴木美穂さんが本を出したことをSNSで知り、早速買って読みました。鈴木美穂さんは、2008年、24歳の時、ステージ3の乳がんを宣告され、右胸全切除の手術を受けたそうです。

悲しみにのどん底時に突き落とされ、その後の闘病生活では何度も心が折れそうになり、「なんで自分がこんなめに」と泣いてばかりいたそうです。「うつ状態」にもなり、「もう死にたい」と自宅マンションから飛び降りようとしたこともあるそうです。そんな鈴木美穂さんが、「どんな経験だって、価値に変えていくことができる」と自らを鼓舞し、生きようとする姿にはとても勇気をもらいました。

すべての人のためになることはできないと割り切る

これらのことを思い出し、今では「全員に絶対的に喜ばれる活動や発信はない」と冷静に捉えるように自分に言い聞かせています。
(中略)
でも、どんなに悩んでも、結局は自分にできることを最大限、愚直にやるしかない。わたしが行動し、発信することで役に立つ人が一人でもいるならば、その人のために頑張りたいと思っています。

わたしは、うつ病を患う誰かの希望になれたらと思い、様々な活動を行い、積極的に発信していますが、これって本当にみんなの希望になっているのか?役に立っているのだろうか?と迷い、悩むことが今でもあります。

うつ病のピアサポートグループ『ガレージとーく』には、毎回初参加の方がいらっしゃいますが、昨年1年間を振り返ると、8回ミーティングを開催し、初参加者は計12名でした。そのうち、リピーターとして、2回目の参加をされた方は、2名だけでした。リピーターになる方が少ないのは、気になるところです。

ミーティングの最後に話してもらう感想や記入してもらうアンケートでは、「良かった」「また参加したい」という声が多いのですが、本音のところでは満足できなかったのではないか?と、考えてしまいます。

自分では良かれと思ってしていることでも、それがいらない人もいるかもしれません。同じ病気や経験でも、助けになれることもあれば、なれないこともあるのだと感じています。

鈴木美穂さんが書かれているように、わたしが行動し、発信することで役に立つ人が一人でもいるならば、その人のために頑張りたい。自分にできることを最大限、愚直にやるしかないんだと改めて思いました。

大きな「軸」を持って生きる

人間、誰しもいろいろな悩み、悲しみ、課題、困難を背負って生きています。がんだけでなく、さまざまな病気や障害、仕事や家庭の問題、人によって失恋も人生における大きな悲しみ、困難です。
(中略)
こういう考えが少しずつ広がって、自分とは違う立場や経験、価値観を持つ人の気持を一人ひとりが「想像」さえできるようになったら、みんながより自分らしく生きられる優しい社会になると思っています。
(中略)
今年からは会社員ではなくなりましたが、これからもこのコンセプトを胸に、人々が支え合い、誰もが自分の居場所を見つけられる優しい社会をつくるきっかけになるような情報発信や場づくり、コミュニティづくりなどをしていきたいと思っています。

人は誰しも何かを抱えながらも、一生懸命生きているのではないでしょうか。うつ病、がんに限らず、病気、障害、親の介護など、いろいろな困難や生きづらさを抱えながらも、自分らしく生きられる優しい社会になって欲しい!というのは、わたしの願いでもあります。

あとがき

これからやりたいことはたくさんありますが、マギーズ東京を運営していると、マギーズの地方版がほしい、マギーズのうつ病バージョン、認知症バージョン、LGBTバージョンがほしいなどという話をよく伺います。
(中略)
イノベーションは、知と知の組み合わせで生まれる、といいます。これから巡る世界中のモデルやアイディアにヒントを得て、素晴らしいところ、参考にしたいところをかけ合わせながら、がんに影響を受けた人だけでなく、みんながより幸せに生きられる日本発の取り組みを考えていきたいです。

鈴木美穂さんも書かれていますが、マギーズのうつ病バージョンがあったらいいな、と思っています。

心が折れそうになったときも「いつか必ず、この闘病経験を活かせる時が来る!」と信じて頑張り抜くことができたという鈴木美穂さん。うつ病とがんを一緒にはできないのかもしれませんが、「いつか必ず、この闘病経験を活かせる時が来る!」という思いで、わたしも生きていこうと思います。

もしすべてのことに意味があるなら

 

著者略歴 (「BOOK著者紹介情報」より)
鈴木/美穂
認定NPO法人マギーズ東京共同代表理事。元日本テレビ記者・キャスター。1983年、東京都生まれ。2006年慶応義塾大学法学部卒業後、2018年まで日本テレビに在籍。報道局社会部や政治部の記者、「スッキリ」「情報ライブミヤネ屋」ニュースコーナーのデスク兼キャスターなどを歴任。2008年、乳がんが発覚し、8か月間休職して手術、抗がん剤治療、放射線治療など、標準治療のフルコースを経験。復職後の2009年、若年性がん患者団体「STAND UP!!」を発足。

2016年には、東京・豊洲にがん患者や家族が無料で訪れ相談できる「マギーズ東京」をオープンし、2019年1月までに約1万4000人の患者や家族が訪問。自身のがん経験をもとに制作したドキュメンタリー番組「Cancer gift がんって、不幸ですか?」で「2017年度日本医学ジャーナリスト協会賞映像部門優秀賞」を、「マギーズ東京」で「日経ウーマン・オブ・ザ・イヤー2017チーム賞」を受賞。

2016年以降、厚生労働省「上手な医療のかかり方を広めるための懇談会」「がんとの共生のあり方に関する検討会」「今後のがん研究のあり方に関する有識者会議」、PMDA運営評議会、都庁「AYA世代がんワーキンググループ」などで複数の行政委員を兼任(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)

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