安定よりも、笑える今日を。映画『俺たちの旅』が肯定してくれた「わたしの生き方」
2026年1月5日、わたしは、まつもと医療センターを退職しました。自分の中にある「正義」を貫くための決断でしたが、組織という大きな壁を前に、自分の選択が正しかったのか、心のどこかで揺れていたのも事実です。
(※退職の経緯についてはこちら:[2026年1月5日 まつもと医療センターを退職しました])
そんな折、1月9日から公開された映画『五十年目の俺たちの旅』を観に行きました。そこで再会したカースケ、オメダ、グズ六の姿。そしてカースケが放った言葉は、迷っていた私の背中を力強く押し、心の霧を晴らしてくれました。
わたしの「正義」の原点
実はわたしには、中学時代に弁護士を目指していたという過去があります。世の中の不条理を正したい、弱い立場の人を助けたい。そんな純粋な正義感に燃えていました。しかし、家庭の事情により法学部への進学は叶わず、その夢を諦めざるを得ませんでした。
当時の悔しさや、どうにもならない不条理を経験したこと。それこそが、今のわたしの正義感や、曲がったことに対する想いの原点になっています。
「肩書きとしての弁護士」にはなれなかったけれど、「自分の人生において正義に嘘をつかない生き方」は選ぶことができる。今回の退職は、あの頃の自分が抱いていた純粋な想いに対する、わたしなりの誠実さの現れだったのかもしれません。
カースケが教えてくれた「本当の馬鹿」
1975年、9歳だったわたしは、テレビの前でカースケたちの自由な姿に釘付けになっていました。それから50年。スクリーンの中でカースケが放ったこのセリフが、今のわたしに深く、深く、腑に落ちました。
「生きるのが楽しくない奴の方が俺より馬鹿だよ。 たとえ生活が安定していようと、金が有ろうと、地位が高かろうと、生きるのが楽しくない奴は俺よりずっと馬鹿だよ」
世間の物差しで見れば、安定した職を辞めるのは無謀に見えるかもしれません。しかし、地位や名誉、安定のために自分の正義を押し殺して生きることは、わたしにとって「楽しくない生き方」そのものです。
これまでも、自分が本当に「やりたい」と思える仕事にこだわり、カースケのように転職も多く経験してきました。ふと立ち止まり、不安になることもありましたが、50年経っても変わらないカースケの価値観に触れ、「自分の生き方はこれでいいんだ」と、歩んできた道を誇らしく思うことができました。
「今日」を生き切る、ということ
映画の終盤、懐かしいドラマの回想シーンと共に流れる主題歌『俺たちの旅』。今の年齢で聴くそのメロディは、また格別にじんわりと心に沁み渡りました。そして、エンディングで流れたこの散文詩が、今のわたしに一番の勇気をくれました。
「明日のために 今日を生きるのではない 今日を生きてこそ 明日が来るのだ」
明日を気にして不安になるよりも、まずは今日という日を精一杯、そして楽しく生き切ること。まつもと医療センターを去る決断をした時、わたしの中にあったのは「正義」でした。そして今、カースケという存在に支えられ、その決断を「情熱」へと変えることができています。
久しぶりに観た『俺たちの旅』は、忘れていた大切なものを思い出させてくれる、素晴らしい時間となりました。あの頃夢見た弁護士にはなれなかったけれど、今のわたしは、自分の心に嘘をつかずに笑えています。
新しい旅は、まだ始まったばかりです。
