益田裕介さんの著書『精神科医の本音 患者の前で言えない本当のこと』を読みました

2022年8月6日にSB新書から発売された『精神科医の本音 患者の前で言えない本当のこと』を読みました。著者の益田裕介さんは、早稲田メンタルクリニック院長で、YouTubeチャンネル『精神科医がこころの病気を解説するCh』を運営しています。

精神科医の本音

わたしはこの本をSNSで知り、すぐにアマゾンで購入しました。それまで益田裕介さんのことは知りませんでしたが、YouTube登録者数30万人を超える現役の精神科医だそうです。

「なぜ精神科医は5分しか診てくれないのかはてなマーク
「なぜ病院を替えたら診断が変わるのかはてなマーク
「なぜ処方される薬が変わっていくのかはてなマーク
「なぜ通い続けても一向に良くならないのかはてなマーク

本書では、患者が医者に対して不信感を抱きやすい疑問を解説しています。例えば、診察中にするべき質問、「名医とヤブ医者」の見分け方から、「薬やカウンセリング」の効果、医療制度の問題などです。

前から気になっていたことでもあったのですが、精神科医療を専門に学んでいなくても医師免許を持っていれば「精神科医」を名乗る事はできる。これは精神科に限らず、歯科医師以外の医師は好きな科を標榜することができるのだそうです。「心療内科」と「精神科」の違いについても参考になりました。

実際に精神科を受診すると、初診はかなり時間を掛けて話を聞いてくれますが、再診は5分くらいの時間で終わってしまいます。もっと話を聞いてもらいたいのに…と思うのですが、医者が時間をロクにかけずに診察する理由も書いています。一つには診察報酬精度の問題があると書いています。基本的な外来診療は、再診の場合は5分見ても29分診ても同じ報酬にしかならず、かつ30分以上いくら時間をかけて診察しても、700円しか違いが出ないそうです。

もう一つの理由は、精神科医が患者さんに対し、圧倒的に足りていないことだそうです。現在、日本で精神科医療を受けている患者さんの数は4,000,000人を超えていると言われています。それに対して、精神科医の数はわずか15,000人程度。「1人の患者さんに1時間かけて向き合う」としたら、とてもこれだけの数の患者さんを診ることができません。益田Dr.は「短時間で患者さんを診ているのは、1人ひとりの患者さんをないがしろにしているのではなく、少しでも多くの患者さんを診たいという精神科医の願いがあるから」だと書いています。

わたしは、病院の臨床心理士のカウンセリングを受けるようになって、うつ病が格段に良くなりました。薬でなかなか良くならない人はカウンセリングを勧めます。ただカウンセリングはお金がかかります。心理士によるカウンセリングは、診療報酬制度上、治療行為としては定められておらず、診療報酬制度に絡むのは、主に医師による診察の場合のみです。つまり、保険診療の中にはカウンセリングによる治療は設けられていないのです。なぜこうなるかも本書では触れています。幸いわたしが受診していた病院の精神科は、カウンセリング料は請求されませんでした。それを読んで、わたしが受診していた病院は良心的だったのだな…と改めて思いました。

益田Dr.はこれから増える精神疾患について、「日本経済に成長が見込めないことで、お金を求める人よりも、ワーク・ライフ・バランスを重視する人も増えていくでしょう。その中で、貧困の問題とは別に、逆にやりがいを持っていないことに悩みを抱える人も増えていくかもしれません。いずれにせよ、精神科の対象となる患者さんは、時が経つにつれて増えていくと思います。」と書いています。

最近は多様性が強調される世の中です。ほとんどの人が共有していたはずの「普通」が通用しなくなっていると感じます。平凡で普通に生きていることが幸せなはずですが、自分にしかない素晴らしい能力やスキルが無い平凡で普通の生き方では、幸せを感じにくくなるなるのではないかと、わたしは感じています。

本書は事実が淡々と書かれているだけで物足りなさはあるかもしれませんが、これから精神科を受診する人、医者を変えようかな…と思っている人は一度読んで見ることをオススメします。

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